ボーガニズムとオーストラリアの階級システム
実はこのテーマ、ボーガン文化の中でもいちばん“深いところ”にある。 オーストラリアは昔から、 「金持ちも労働者も、パブで同じテーブルに座ってビールを飲む国」 という“平等主義の国民イメージ”を大事にしてきた。 そのせいで、オーストラリア人は歴史的に 階級の話をストレートにするのが苦手。 そこで登場するのが—— ボーガンという便利な裏口。 ■ 階級を言わずに階級を語る魔法の言葉 本来ならこう言うべき場面で、 「あの人、労働者階級だよね。」 と言わずに、 「ちょっとボーガンっぽいよね。」 と濁す。 本来ならこう言うべき場面で、 「あの人の文化的趣味、苦手なんだよね。」 と言わずに、 「あれ、めっちゃボーガンじゃん。」 と言い換える。 つまり、 ボーガンは“階級の代わりに使える文化ラベル”として機能してきた。 ■ ボーガンとヒップスターは階級の代理キャラ? 社会学者スティーブ・スレッドゴールドとジェシカ・ジェラードは、 ボーガンやヒップスターのようなキャラクターが オーストラリアの公共文化における“階級の代理”として働いている と指摘している。 という構図だ。 クリス・ギブソンの「ボーガンヴィル」研究でも、 ボーガンというラベルは 階級的なスティグマ(偏見)を生む一方で、 地域の誇りにも変わりうる という結果が出ている。 つまり、 “ボーガンと言われたコミュニティが、逆にその言葉を誇りとして受け入れる” という現象が起きるわけだ。 ■ ここに最高の矛盾がある ボーガンは侮辱として使われる。 「お前、文化的に未熟だよ。」 ボーガンは防御として使われる。 「だから何?」 ボーガンは自慢として使われる。 「むしろ誇りだし。」 ボーガンは国民的アイデンティティとして使われる。 「これが本物のオージーだろ。 たった4文字の侮辱語が、ここまで複雑で洗練された文化的進化を遂げるなんて、オーストラリアらしくて最高に面白い。
